令和2年分の扶養控除等申告書(通称、マル扶)の確認ポイントを教えてください。
出演: ・・・M社 経理部 まい
・・・顧問税理士
― M社 会議室にて ―
M社経理部まいと顧問税理士が、打ち合わせを行っています。
先生、久しぶりに年末調整で変更点がない年ですね。
そうですね。
令和元年分の年末調整の計算は、平成30年分からの変更点はありませんね。
何だか含みのある言い方ですね。
令和2年分の扶養控除等申告書は、平成31年分と違っていますからね。
その点はご留意いただかないといけませんね。
え〜っ!
令和2年から所得税や住民税の改正がありますからね。
令和2年分の扶養控除等申告書でこの改正が反映されている部分があります。
たとえば?
配偶者や扶養親族等の所得要件の上限が軒並み10万円引上げられています。
つまり、『38万円以下』であったものが、『48万円以下』になります。
これは、所得控除の1つである“基礎控除額”がそのように引上げられたからです。
じゃあ、10万円ずつ増えると。
とはいえ、給与所得控除額や公的年金等控除額が原則10万円引下げられていますので、収入の源泉がパートやアルバイトの給与のみ、あるいは公的年金等のみであるようなケースであれば、これまでと対象者は変わらない、と考えていただいて構いません。
なんだ。安心しました。
ただし、たとえば寡婦、父親の方の寡夫も含めた控除には申告者本人の所得要件がありますが、この場合は改正なく『500万円以下』のままなので、注意が必要です。
と言いますと?
所得金額が変わらないということは、給与所得控除額の改正の影響だけ受けるということです。
所得500万円以下を給与のみと仮定した年収ベースに換算すると、令和元年分であれば6,888,889円以下だったのが、令和2年分では6,777,778円以下になります。
他にもそういうケースはあるのですか?
そうですね。
源泉控除対象配偶者の要件にも申告者本人の所得要件がありますが、こちらも『900万円以下』のままです。
ですから同じように給与所得控除額の改正の影響を受けるのですが、もう1つの改正の影響も受けます。
もう1つ?
はい。
改正によって創設された“所得金額調整控除”の適用を受けるか否かによって、上限の年収額が異なります。
具体的には、同じ『900万円』であっても給与のみと仮定した年収ベースに換算すると、適用を受ける場合は1,110万円、適用を受けない場合は1,095万円になります。
いやいや、もうね。
頭が沸騰しちゃいそう。
“所得金額調整控除”の適用対象者は、年収850万円超の人が一定の事由に該当する場合です。対象者は限られるでしょうし、年収の差も15万円です。年収1,000万円を超える人は要チェック、と覚えておかれるとよいでしょう。
もう他にはありませんよね?
“住民税に関する事項”がありますよ。
一番下に記載欄があるやつですね?
そうです。
16歳未満の扶養親族欄の所得の見積額の欄は、先ほどと同様の改正の影響を受けるわけですが、もう1つ大事なのが『単身児童扶養者』の欄が新設されている点です。
何ですか、その単身何とかとは?
住民税の非課税対象者にこの『単身児童扶養者』が含まれることになった影響で、新たに記載欄が設けられました。
どのような人が対象ですか?
端的に言えば、児童扶養手当を受給しているひとり親です。
じゃあ、寡婦(寡夫)控除を受けている人が対象だと。
そうとも言いきれなくて。
今度は何ですか?
対象者が一致していないんですよね。
たとえば寡婦(寡夫)控除の要件は、婚姻の有無がベースです。
でも『単身児童扶養者』は、婚姻の有無だけでなく、内縁関係がある場合も支給対象から外されます。
なるほど。
まあでも、寡婦(寡夫)にチェックがあれば、気にしろということですよね。
ご理解の通りです。
扶養控除等申告書は、非常にセンシティブな内容が含まれていますから、詳しい内容をこちらから確認しづらいかと思います。ただし、こういった場合には、この欄にチェックを付してください、というアナウンスをしておく必要はあるでしょう。
わかりました。
では、今年も記載の手引きを用意してくださいね。
よろしくお願いします。
承知いたしました。
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